みなさんこんにちは、コニタン(@koni_tama)です。
五竜山荘の有名なTシャツ、「山が好き、酒が好き」が好きです。
日本酒好きが高じて、昨年12月〜今年3月にかけて、日本縦断バイク旅の途中、信州で蔵人のアルバイトをしました。
そしてあくまで予定ですが、今年の冬も従事する予定です。
ちなみに、元々そういった職に就いていたのかと言うとそうでも無く
大手保険会社事務→web制作会社でプランナー→大手広告代理店に常駐→バイク旅 という経緯です。
酒造りはあまり身近では無い世界なので、よく聞かれる質問への回答や、「私も、やってみたいけど一歩を踏み出せない」という人のために、体験をまとめようと思います。
せっかくの体験なので、一度まとめたかったんよね。愛が溢れて思ったより長くなっちゃった。すまん。
こんな人におすすめの記事になっています。
- 日本酒が好き
- 日本酒造りに興味がある
- 酒蔵で働いてみたい
- 女でも酒蔵で働けるのか気になる
- 実際に働いた人の感想が知りたい
酒蔵の仕事概要とシーズンについて
まず、「蔵人(くらびと)ってなに?」と「杜氏とかって言うんでしょ、知ってる!」という方、よくいらっしゃいます。特に後者は多いですね。私は杜氏ではありませんよ、超絶恐れ多すぎる…。
ネット辞書で調べると、このように出てきます。
【くらびと(蔵人)】…酒蔵で働く人。杜氏のもとで働く職人。
【とうじ(杜氏)】…酒造りの職人の長。また。その職人。さかとうじ。とじ。
つまり、ざっくりと「日本酒を作る職人さん達」を「蔵人」といい、そのトップ職人を「杜氏」というのですね。さらに蔵人にも麹や酵母、蒸米などのプロとしてそれぞれ専門の役職があるようです。
参考:頭、大師、釜屋、道具回し……杜氏を中心とした日本酒造りの組織には、どんな役職があるの?
小さな蔵では細分は無く蔵人全員で、全ての仕事をおこないます。
私が働いた蔵も、「仕込み時期」のみに蔵人を増員し、全員で洗米〜ラベル貼りまで行なっていました。
さて、この仕込み時期ですが、一般的に10〜4月の「寒い時期」に行います。
寒い冬場が醪(もろみ)など温度調整もしやすく、さらに古くから農閑期の農家の方などが人手として雇われ、ウィンウィンの関係を築いていました。今では、規模の大きい会社だと、機械で温度管理できるので一年中仕込みを行なったりもするようです。
作業内容は?というと、主に私が行なっていた仕事内容は超ざっくり、仕込みの流れに沿ってこんな感じです。
- 洗米・・・米を洗う作業。水に漬ける時間が長いと水分を吸ってしまうので、決まった秒数で洗います。
- 浸漬・・・米に水を吸わせる作業。その日の気温湿度、扱う米の水分率などで、秒単位で漬ける時間を変えます。
- 蒸米/放冷・・・お米を炊くのでは無く、蒸す。その後適切な温度になるよう拡げて冷まします。
- 麹造り・・・冷ました蒸米に麹菌を振って、繁殖させます。「製麹(せいきく)」とも呼ばれます。
- 酒母造り・・・酛(もと)とも言います。蒸米、麹、酵母、水、乳酸を加え、酵母を培養します。
- 醪(もろみ)仕込み・・・酒母をタンクに入れ、麹、蒸米、水を加えて発酵させます。約1ヶ月かけて、いよいよ日本酒らしい香りに。
- 醪管理・・・毎日、何回も醪の温度を計って、タンクを温めたり冷やしたり、常に酵母の働きを管理します。
- 上槽(じょうそう)・・・醪を絞って、酒粕と日本酒にわけます。
- 濾過・火入れ・瓶詰め・瓶洗い・・・文字通りですね。火入れは酒の発酵を止めるために熱殺菌する工程です。
- 杉玉作り・・・新酒の時期を知らせる、酒蔵の玄関に吊るす杉の葉でできたボール状の「杉玉」を作ります。
- 道具洗いと運び・米運び・・・1〜9の作業をするにあたり、作業前、作業後と、たくさんの小さな道具や自分の身長より大きな道具〜洗濯物をたくさん洗い、運びます。また、米を移動させたり、水を運んだり、10〜20kgほどのものをたくさん、毎日運んでいました。
※精米は、精米所で行なっていました。
最初から最後まで、網羅的に仕事できて幸せ〜!!
冬の信州で行う作業なので、最初は寒いのですが体を動かせばすぐ温まります。また、麹を作る部屋(むろ)は約40度あり、汗をかく作業もあります。
もちろん、シーズン中はおもに腕がムキムキになります。
杜氏がその日の気温、湿度、過去のデータから指示を出し、毎日ものすごく細かい単位で秒数や温度管理をします。それでも「絞ってみるまで、(味が)どうなるかわからない」というのだから、面白い世界です。
まさに「醪のみぞ知る」なのだね。
なんで蔵人になりたかったの?
一つには、「日本酒が好き」ということ。大学時代に老舗蕎麦屋でバイトしていたのですが、そこで提供される日本酒を呑み、お客さんへ説明しているうちにハマり、自分で本を買って勉強していました。
また、その時の大将と女将さんが大好きで、「職人への憧れ」も生まれました。
卒業後、会社員時代には日本酒居酒屋の常連で、仕入れの試飲会に行くことも。退職後少しだけ、店員としてアルバイトをしていました。
広告の仕事をしているときは「一つのものづくりにもっと深く携わりたいなぁ」と思いを馳せるも、日々の忙しさで忘れ、いつの間にか退職。
退職後のバイク旅中には、割れ物にも関わらず、ご当地ワンカップを集めて回っていました。
そうこうしているうちに冬が来て、地元に帰るか選択を迫られました。そのときひょんな出会いから信州に居候が決まり、居候家主の活動に同行してカヌー体験へ。
そこで、サングラスをしためちゃくちゃかっこいいカヌーの先生(70代)に出会いました。
あの人超かっこいい〜!オーラ放ってる!
聞けば世界を渡り歩いたとか、動画監督だったとか。お近づきになりたくて、話してみたくて、ランチタイムにすかさず近くへ座ったところ…もうすぐ蔵人の仕事が始まるという話題に!
その瞬間ピピピっときました。
そうだ!私も蔵人になろう!!
今までの蓄積と、出会いが重なり、「酒蔵で働きたい」に変換された瞬間でした。そうと決まれば帰ってすぐ求人を猛検索。
ちなみに、その方に枠が空いているか伺おうかとも頭をよぎりましたが、まずは自力で色々探したくて、黙ってました。
蔵人になるには?何社か受けてみてわかったこと
主に探した手段はこの3つ。
・ネットで「地域名 蔵人」で検索
・ハロワに行く
・コネ
毎年決まったメンバーが蔵人であることがほとんどなので、欠員が出るとすぐ埋まります。欠員がでた時に連絡をもらえるようにコネを作っておいたり、事前に連絡をしておくといいですね。
雇用形態は住み込みの季節雇用、住み込みなしの季節雇用、年間の正社員、契約社員、などの雇用形態がありますので、最初に希望をはっきりさせておくと良いでしょう。
結局、私は居候先家主の口添えもあり、そのカヌー体験で出会った方が働く酒蔵で働かせていただくこととなりました。
でも色々自分で行動してみて、わかったことがあります。
ひとつくり(ワンシーズン)だけだと落ちる。
「熱意は十分あるが、ぶっちゃけ移住も決めるか視野に入るし、ワンシーズンだけかもしれない」旨を正直に述べ落ちました。企業は教育コストもあるので、そりゃそうですよね。でも、やったことのない世界で、やってみないと自分に合っているかわからないし、嘘をつきたくない。
そんな不器用な感じでやってましたが、企業の方のためにも、自分のためにも、正直に伝えてよかったと思っています。
求人は夏頃探すのが良い
私が探したのは10月。早いところではすでに仕込みが始まる時期です。求人を探すと「今期の募集は終了しました」という悲しいメッセージが表示されることも多く、悔しい思いも。酒蔵の多い信州だからよかったものの、通常ならもっと早くに探しましょう。
酒蔵によって大きく雰囲気が異なる
機械化をして、年中作れる酒蔵もあれば、家族単位で昔ながらの作り方をする会社もあります。機械化をすれば力仕事も減るでしょうし、そう言う面では女性も働きやすいでしょう。機械が一部仕事をするので、より開発に力を入れたり、研究したり、ということに集中できます。
また、小さな歴史のある酒蔵なら「昔ながら」の作り方を肌で感じることができますし、直接自分の手で全ての工程に関わることができるので知識も満遍なくつき、作っている実感も沸きやすいでしょう。
近年は酒蔵自体が経営難になり、引き継いだ運営会社が全く別業種という酒蔵も増えています。より一層、「酒蔵ごとの色」が違ってきている印象です。
また、トップである杜氏によっても、こだわり方や作り方、働く環境が大きく違うので、その辺りも周囲の人に聞いたり、実際に作られているお酒を調べたりして考慮したほうが良いと思います。
私の働く酒蔵は、規模は小さくても常にいろんな酒造りにチャレンジしていて、素朴で澄んだ美味しさがあるお酒を作っているよ!好きだなぁ。
男社会?女性でもできる?
男性が多い、という意味ではまだ男社会ですが、特に女性ができない仕事というわけではありません。
なぜ昔は男性社会だったかと言うと、諸説ありますが、私が信じている説は「昔は自宅で様々な菌を扱う「漬物づくり」などを女性が行なっており、その菌が蔵に入ることを防ぐために【女人禁制】とされた」という説です。なので、今は特に性別は関係ないと思っています。女性の杜氏も増えていますしね!
先ほど述べたように、会社によっては機械化が進んで、力仕事が少ないところもあります。ラベル貼りや、併設ショップの従業員など、力仕事のない部署もあります。なので、会社によります。
寒い時期の仕事なので、寒さへの耐性の方が必要かもしれませんね。生理とかもあるでしょうし、職場に相談できる女性がいると頼もしいでしょう。
楽しい・好きな作業
実際にやってみて、二日目には若女将を捕まえてこう言いました。
あの。まだ早いのはわかっているんですけど。来期も、ここで働かせてください!
最後までやり終えて、振り返ってみても、月曜日が楽しみで、毎日朝が楽しくて、ワクワクして、帰宅時も充足感がいっぱいの日々でした。
もちろん肉体的疲労感はありましたが、その分、ぐっすり眠りにつく程度。
そして「好きなもの」がたくさん増えました。
- 醪の味見・・・香りが毎日変わって、甘さが出てきたり、酸味が出てきたり毎回発見がある
- 蒸米の蒸気がのぼる朝が好き・・・出勤すると、大きな蒸気が立ち上っていて、お米のいい香りがする
- 醪の観察・・・どろっとした状態が、だんだん泡が出てきて、しゅわしゅわアルコール発酵していく過程が楽しい
- 道具が好き・・・職人の道具って、かっこいい!機械に書かれたレトロなタイポグラフィも好き。
- 酒蔵の人たちが大好き・・・探究心があって、淡々と仕事に打ち込む姿はかっこいい。
- 仕込み終わりの「甑上げ」が好き・・・社長や杜氏家族と、蔵人家族が集まって、仕込み終わりを労う行事。自分も、蔵人として一員であると感じられて、好きな人たちに囲まれて幸せになる。
ワクワクすること、ここに書き切れないほどあります。
総じて言えるのは、「酒造りは五感を使って、働くこと」「酒造りは科学」だったということ。毎日、肌で温度を感じて、目で米の具合をみて、鼻で香りをかいで、しゅわしゅわと音を聞いて、時に味をみて。心も元気になるようでした。
そして、微生物の働きと向き合い続ける酒造りは、たくさんデータを取って、数値ともむきあいます。ですが、データ通りには仕上がらない面白さがあります。毎日発見、不思議。
そしてだからこそ次はもっと、わかるようになって、役立てるようになりたいですね。
さて、ぺーぺーのくせに、長々と語りましたが、私の体験が誰かのお役に立つことを願っています。
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